平成17年度行政課題研究(要旨)
「自治体版 市場化テスト」
〜競争から協奏へ〜

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はじめに

 皆さん、「市場化テスト」という言葉をご存知ですか?

 多くの方が、「何か聞いたことあるな〜」「ああ、国が行革でやっているアレでしょ」等と1度は耳にしているのではないでしょうか。

 市場化テストとは、官vs民もしくは民vs民の競争入札によって公共サービスの担い手を決めていく制度です。 今までの制度との際立った違いは、官民競争入札になった場合、官(行政)は競争の当事者として民間事業者等と競い合うことにあります。 このことから、「官がはじめて競争にさらされる制度」等と紹介されることもあります。

 この市場化テストは、地方自治体職員にとっても決して無縁のものではありません。 平成18年3月現在、市場化テストは、「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律(公共サービス改革法)案」として国会に提出されていますが、 その中には、「住民票の交付等」の市町村の窓口サービスも対象となる事業として盛り込まれ、地方自治体での市場化テスト実施にも道は開かれています。 市場化テスト導入は国だけの課題ではなく自治体職員にも大変重要な課題なのです。

 しかしながら、国と地方自治体を比較した場合、仕事の内容、住民との関係、地域における役割等、多くの面で性質の異なる点があり、 一律に市場化テストを導入しても地域に根ざした制度として活用できないことは明らかです。 そこで、自治人材開発センター政策研究部では、地方自治体における市場化テストについて、いかにあるべきかを研究いたしました。 その結果、市場化テストの本質は、単なるビジネスチャンスの提供や、白黒をはっきりつける天秤がけの世界ではなく、 より良い地域社会を築いていくための地域関係者の協働関係の構築であるとの結論に達しました。 市場化テストによって、官民競争に象徴される優勝劣敗の仕組みをつくるのではなく、 行政・住民・企業等の全ての地域関係者の関係を見直し最適化することにより、地域における理想の公共を構築できるのではないでしょうか。 私たちは、その想いを最終提言「競争から協奏へ」の言葉に表しました。 市場化テストについては、今後多くの検討がなされ、実施方法等について試行錯誤されることと思います。 当研究報告書は、市場化テストの実施方法についての詳細を記載したマニュアルとしてではなく、 制度の枠組みや実施にあたっての考え方などを整理し、概論として示しました。



「自治体版 市場化テスト」
〜競争から協奏へ〜
(目次)

第1章 市場化テストとは
1 市場化テストの概念
2 海外での官民競争
3 NPMに見る海外での公共経営に対する考え方
4 日本における取組状況
コラム1 すばやい経営判断を実現させる財源・権限の委譲がなされているか?包括予算制度
第2章 市場化テストの意義
1 公共サービスのあり方
2 市場であることの意味
3 市場化テストの位置付け
4 市場化テストを導入する際の心構え
5 市場化テストを導入する際の留意する視点
コラム2 余計な仕事は抱えていないか?事業仕分け
第3章 市場化テスト実施の制度設計
1 市場化テストを導入するには
2 行政と民間とのコスト把握の均一化
3 市場化テスト実施に係るコスト
4 情報開示のあり方
5 情報隔壁(ファイアーウォール)
6 入札段階での第三者機関のあり方
7 市場化テストで官が落札できなかった場合の雇用問題への対応
8 市場化テスト制度設計と4つの入札基本モデル
コラム3 職員の自律的改善・改革意欲が満たされる体制があるか?アントレプレナーシップ制度
第4章 官民競争入札等実施プロセス
1 入札を実施する手順の基本的な流れ
2 入札基本モデル
3 官民競争入札等における実施要項の作成
4 入札実施の準備
5 官民競争入札等の実施
6 落札者の選定
7 落札者との契約
8 評価の実施
コラム4 3つの制度を振り返って
第5章 提 言
1 2007年問題を契機に
2 地域社会を支える人材育成
3 市町村の枠を越えて
4 市場化テストの可能性
5 競争から協奏へ

主要参考文献
あとがき


第1章 市場化テストとは
市場化テストとはそもそもいったい何なのか?世界各国の歴史的動向と、日本の国及び地方における取組状況を紹介します。
第2章 市場化テストの意義
 市場化テストの意義を考察してみました。 市場化テストを官民競争入札という狭い意味にとらえずに、公共のサービスを見直すためのきっかけとして大きくとらえ、 今後の公共サービスのあり方と関連させて考察しました。併せて、市場化テスト導入のための心構えを取り上げ、 地方自治体における市場化テストの意義を明らかにしています。また、これから市場化テストを論じるために、 本報告書における広義と狭義の市場化テストを定義しました。
第3章 市場化テスト実施の制度設計
 狭義の市場化テスト「官民競争入札等」について4つの入札基本モデルを示しました。
 その上で、市場化テストを実施するために配慮していく諸問題について4モデルとの関連性も含めて記述しました。
第4章 官民競争入札等実施プロセス
 官民競争入札等の競争入札実施プロセスについて、実施の流れに沿ったかたちで解説してあります。 第3章で示した4つ入札基本モデルに照らし合わせ各モデルの該当項目がわかるようにしてあります。
第5章 提 言
 本報告書を作成して、市場化テストを、これからどの様にとらえていくかを考え、提言いたしました。

 提言は大きく3つの柱があります。

 第1の柱は「人材」の視点です。

 提言「2007年問題を契機に」「地域社会を支える人材育成」においては、 これからの社会を見据えて人材活用に市場テストを活用すること。 また、市場化テストがもたらす変化に対応する地域社会を支える人材育成の必要性を訴えました。

 第2の柱は「行政適正化」の視点です。

 提言「市町村の枠を越えて」では、市町村合併等の自治体規模広域化ではなく、 各分野ごとの自治体事務の広域化が自治体事務を適正化することになって有益であり、 このことを小規模自治体等で議論するべきとしています。

 それに続く提言「市場化テストの可能性」では、市場化テストを国・県・市町村等の個々の行政機関単位で取り組む、 別個の行政改革ツールとするのではなく、現在の行政枠組みを越えて、 地域の行政全体を最適化する手段としての可能性を秘めたものであると指摘しています。

 最後の第3の柱は当報告書の主張「これからの公共構築のあり方」です。

 最終提言「競争から協奏へ」で、市場化テストを通じて、調和のとれた、これからの公共構築についての想いを表しました。
競争から協奏へ(要約)
 市場化テストは、競争の導入による公共サービスの改革である。 官民が競争により、コストと質の両面から比較して、最も優れた主体がサービスの提供者となる制度と説明されている。 この説明から考えると、行政と民間は対立するものであるように感じられる。

 しかし市場化テストは、それぞれの主体が「競って」よりよい地域を創っていくという性質のものであるが、 それは「争い」によるものではない。勝ち負けによりどちらかに軍配を上げようとするものではないのである。

 市場は、各主体の関係が、相互に利益を得、円満な関係で良い結果を得るという関係、 すなわちWIN-WIN関係でなければ、持続していかない。 地域も同様であり、お互いが競い合うという緊張感を持ちつつも、相互理解と協力がなければ、よりよい地域は創れない。 そのためには、各主体が対等に話し合う必要があり、そのコミュニケーションの場を提供するのが市場化テストなのである。 市場化テストは、地域の公共の役割分担を見直し、地域の公共を「協同で」再構築しようとするものでなければならない。 それは、行政が指揮者となり、地域の公共を担う「奏者」をまとめていくオーケストラのようなものではないだろうか。 指揮者は、奏者の能力や特性を知り、奏者との合意の上で、全体のまとまりを考慮して指揮を行わなければならない。 奏者は、指揮者との合意に基づいて演奏を行うだけでなく、他の奏者との関係も考慮しながら演奏を行わなければならない。 そして観客も含めて、息が合ったとき初めて、よい交響楽となるのである。

「競争から協奏へ」

これが、本報告書の提言である。

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